事務所運営の実務
スタンドインの仕事とギャラの決まり方
スタンドイン・吹き替え・ボディダブル・代役は、似た言葉ですが中身が違います。違いを押さえたうえで、ギャラ(出演料)が何で決まるのか、事務所がスタンドイン案件を所属タレントに回すには何を準備しておけばいいのかを整理しました。
スタンドインとは
本番の前に、出演者の代わりに立つ仕事です。
撮影の現場では、本番の前に照明の当て方やカメラの位置、ピントを合わせる作業があります。この間、出演者本人の代わりに同じ位置に立ち、同じ動きをするのがスタンドインです。出演者の待ち時間と負担を減らすために置かれます。
目的が「位置と光を合わせること」なので、選ばれる基準は演技力より背格好です。身長・体型・髪の長さや色が出演者に近い人が求められます。CM・Web動画・ミュージックビデオ・ドラマなど、撮影のある現場で募集が出ます。
吹き替え・ボディダブル・代役との違い
いちばん大きな違いは「本番に映るか」です。
| 呼び方 | 何をするか | 本番に映るか |
|---|---|---|
| スタンドイン | 本番前の照明・カメラ合わせで、出演者の位置に立つ | 基本は映らない |
| 吹き替えボディダブル | 手元・後ろ姿・全身の引きなど、出演者の代わりに体の一部や遠目の姿が映る | 映る(顔は映さない前提が多い) |
| スタント | 転ぶ・落ちる・ぶつかるなど、危険のある動きを代わりに行う | 映る(専門の技術が要る) |
| 代役 | 出演者が出られなくなったとき、役そのものを代わる | 映る(本人として出る) |
事務所にとっての違いは、映るかどうかで、ギャラの考え方と、タレント本人の意向の確認が変わることです。映らないスタンドインは演技の経験より背格好で選ばれる一方、吹き替えは体の一部とはいえ作品に残るので、本人とすり合わせてから応募するのが安全です。
スタンドインのギャラは何で決まるか
一律の基準額はありません。条件の組み合わせで決まります。
スタンドインの出演料には、業界団体や公的機関が公開している基準額が見当たりません。募集ごとに提示される金額で、次の条件によって上下します。金額だけで比べず、条件をそろえてから比べてください。
1. 拘束時間と延長の扱い
1日いくら(日給)なのか、何時間までの拘束なのか、超えたら延長料が出るのかを見ます。スタンドインは本番が終わるまで現場にいることが多く、撮影が押すと拘束が伸びます。延長の扱いが書かれていない日給は、実質の時給が読めません。
2. 本番に映るかどうか
映らないスタンドインと、体の一部が映る吹き替えでは扱いが変わります。映る場合は、作品にその人の姿が残るぶん、条件が上乗せされることがあります。同じ「スタンドイン」の募集でも、どちらなのかで比べ方が変わります。
3. 媒体と使用期間(映る場合)
吹き替えとして映る場合、テレビCM・Web広告・ドラマなど、どこにどれくらいの期間使われるかで条件が変わることがあります。使用期間や二次利用の範囲が書かれているかを確認します。
4. 時間帯・場所・交通費
早朝集合・深夜までの撮影・遠方のロケでは、条件が変わることがあります。交通費が別途支給か、ギャラに含まれるかで、手元に残る額が変わります。
5. 何社を経由して届いた募集か
同じ現場の同じ枠でも、制作会社から直接届いたのか、キャスティング会社や代理店を何社か経由して届いたのかで、事務所に残る額が変わります。経由する会社が増えるほど、間に入る取り分が増えるためです。案件の入口ごとの違いはタレント事務所がキャスティング案件を増やす方法(4つの入口の比較)にまとめています。
募集文で確かめる項目
応募の前に、ここが書かれているかを見てください。
- 本番に映るか、映らないか。映る場合は、どの部分がどれくらい映るか。
- 求められる背格好。身長の幅・体型・髪の長さや色・服のサイズ。出演者に合わせるので、ここが選考の中心です。
- 拘束時間と延長の扱い。集合と終了の目安、延長料が出るかどうか。
- ギャラの形と支払い。日給か時間給か、交通費は別か込みか、いつ支払われるか。
- 守秘の扱い。出演者名や作品名を口外しない約束があるか。撮影現場のことをSNSに載せない約束が付くこともあります。
- 締め切り。撮影日の直前に出る募集もあり、締め切りまでの時間が短いものがあります。
事務所がスタンドイン案件を取るには
背格好で選ばれる仕事なので、準備で差がつきます。
所属タレントのサイズを、正確に1か所にまとめる
スタンドインは「出演者に近い背格好の人」を探す募集です。身長・体型・服や靴のサイズ・髪の長さが最新で、すぐ出せる状態になっているかで、応募できる案件の数が変わります。宣材写真の撮影時から髪型や体型が変わっているなら、全身の近影を足しておきます。
その日のうちに返せる形にしておく
背格好が合う人を探して、資料を整えて、応募する——この作業に時間がかかると、返す前に枠が埋まります。条件で所属を絞り込めて、そのまま応募できる形にしておくと、短い締め切りにも間に合います。
受けるかどうかの線を、所属ごとに決めておく
スタンドインは本番に映らない仕事です。現場の進み方を間近で見られる機会と考える所属もいれば、本人の方針として受けない所属もいます。映らないスタンドインは受ける、体が映る吹き替えは本人に確認する、のように線を先に決めておくと、届いた募集を迷わずさばけます。
入口を増やす
スタンドインの募集は、制作会社やキャスティング会社から事務所へ直接声がかかる形のほか、キャスティング会社への登録や、案件をまとめて届けるサービス経由でも届きます。入口ごとの向き不向きは案件の入口4つの比較を参考にしてください。
KAMITEについて
案件をまとめて届けるサービスです。
KAMITEは、代理店を何社も経由する前の一次案件を、事務所のLINEにまとめてお渡しするサービスです。届く案件には、スタンドインやエキストラの枠も含まれます。所属タレントの名簿を登録しておけば、届いた案件にチェックを入れるだけで複数人まとめて応募できます。
料金は月額100,000円(税込)・初期費用0円のひとつだけです。最低利用期間は3か月で、その後は月単位で解約できます。いま実際に流れている案件の件数と出演料の幅は、サービスのページに実データで出しています。